ほとんどの豊胸材訴訟で、原告はすでに病人だったので第1条件は満たされたものとして、第2条件を証明するために原告弁護士は〈証拠の優越性〉によって陪審を説得しようとした。スターンの病気の医療記録は裁判外で和解した時に封印されたので詳しくは不明である。第2、第3の条件は、その前の第1条件が満たされるかどうかで変わってくる。豊胸材が危害の原因でなければ、メーカーは怠慢とはいえないし、危害がなければ豊胸材を非難することはできない。公判にもち込まれた豊胸材訴訟のうち、ほとんどのケースでは(裁判外で和解したはるかに多くの訴訟には必ずしも該当しないが)、原告は明らかに病気だった(スターン訴訟では、評決後に裁判外和解条件の一部として記録が封印されたので、彼女の病気がどんなものであるか確実なことを知るのはむずかしい)。だから、原告弁護土のすべき主な仕事は、原告が病気であることの証明ではなく、病気の原因は豊胸材だと証明することだった。そのためには、証拠の優越性によって陪審を納得させることが必要だ。これは、評決が合理的疑念を越えているという刑事訴訟での必要条件より緩い基準だ。基準の寛大さの比較はさておき、証拠の優越性という表現は、見かけよりもたいして意味がない。紛らわしいことではあるが、この表現は、2種類の医学上の証拠一因果関係を支持する証拠と支持しない証拠ーが存在することを表す。現実には、これはとうていありえないことで、因果関係を支持する証拠が存在するか、しないかのどちらかである。因果関係を支持する証拠が存在しなければ、関連がないという見解をとらなければならない。そして因果関係があることを証明する責任は、それを主張する側にある。
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